現金と預金の残高管理:実査と確認
現金と預金の期末残高は必ず会計監査の対象となります。
自社で実施すべき現金預金の管理方法
現金の残高管理
①日次
現金については、毎日、残高照合を実施するのが基本です。
毎日夕方には、実際に現金を数え、金種表に記載し、現金出納帳の日次残高と照合します。
基本的には二人で実施することが、ダブルチェックの観点から望ましいですが、人数が限られている場合、一人でも結構です。
②月次、年度末
月末もしくは月初には、毎日やっている作業(実際に現金を数え、金種表に記載し、現金出納帳の日次残高と照合)に加え、会計帳簿の現金勘定の残高と照合します。照合印や確認印といった証跡を残してください。
これは、確実に現金出納担当者とは違う誰かが実施してください(ダブルチェック)。
預金の残高確認
①日次
預金についても毎日残高確認を行うことが望ましいです。通帳やインターネットバンキングの画面と会計情報の預金勘定残高の照合になります。(実務では当日の夕方ではなく、翌日の朝に行われることが多いです。)
②月次
月末もしくは月初には、同様に、通帳やインターネットバンキングの画面と会計情報の預金勘定残高と残高を照合します。もしも小切手や手形支払いをしている場合、通帳(当座照合表)やインターネットバンキング当座預金勘定の残高がズレることがあります。この場合にはそのズレが合理的な理由によるものであることを説明する表を作ります(銀行勘定調整表)。
この月次で行う預金の残高照合は、確実に担当者以外の方や上長によるダブルチェックを実施してください。
普段動いていないという理由で、メインでない普通預金口座や定期預金を対象外としていることがありますが、これはやめてください。月次では全口座を残高照合してください。(普段動いていない口座は不正に利用されやすいのでこれを予防するため)
会計ソフトには、口座別の補助科目を設定しておくことをお勧めします。
③年度末
年度末には、上記に加えて、銀行から残高証明書を入手し(有料)※、会計情報の預金残高勘定との照合を行います。定期預金についても定期預金証書が実在することを確認し会計情報の預金残高勘定との照合を行います。
銀行の残高証明書は、銀行別支店別のもので、当該支店にある銀行口座を一覧にして記載されています。この証明書により、銀行口座自体を照合します。作った覚えのない口座や閉鎖済みの口座の有無を確認します。
残高証明書も全口座を対象にしてください。
定期預金証書現物と通帳現物も照合します。
上席者によるダブルチェックを行い、その証跡を残してください(サインや、確認印等)
年度末の照合については、前年末と二期比較の形にしておくことをお勧めします。
※銀行残高確認書を入手する方法:事前に銀行口座のある支店に書面で申し込みをしておきます。銀行残高確認書発行には手数料がかかります。詳しくは銀行支店に電話問い合わせしてください。
その他投資等に含まれる資産についても実査を行います。
(基本的に、現物資産については、すべて管理台帳を作成し、実査を行う必要があります(資産保全責任を果たすため)
下記については、あまり異動がないことや、管理部門がはっきりしていないことから、その実在性を再確認していないことがあります。ただ、金額的には大きなものになっていることが多く、変更があった時だけでなく、年に1回は、実査することが必要です。
また、現物管理台帳を備えておくべきです。
実務の現場では管理台帳と証書類を一緒にファイリングして、金庫にしまわれていることが多いですし、お勧めします。
子会社株式、関連会社株式 :株券、株券不発行通知、株主総会通知、直近決算書
ゴルフ会員権 :会員権証書
スポーツクラブの預け金 :預け金証書
敷金、保証金 :契約書
預託金 :預託金証書
監査法人が行う現金実査と残高確認
監査手続きとしての実査
監査法人は年度末には実査に来ます。年度末日もしくはその翌日に来ます。
監査人が自ら確認することで現物資産が期末日時点に本当に存在していたことを証明するためです。
対象は、現金や定期預金証券、受取手形、小切手、支払手形控え、投資有価証券、出資証券等の換金価値のある現物資産。
収入印紙や切手、回数券等も対象にすることがあります。
例えば、現金については、現金現物を実際に監査人が数えます。そして、貴社作成の金種表、現金出納帳、会計情報の現金勘定の残高と照合します。
監査法人の銀行残高確認書(預金の残高確認)
監査法人が銀行より入手する残高確認書は、貴社が入手する残高証明書とは違うものです。具体的には、貴社の残高証明書が預金残高しか記載されていないのに対し、監査法人の残高確認書では、預金口座の残高、借入金の残高、保証や担保の有無、デリバティブ取引の有無等の銀行との取引を幅広い記載を求めています。
監査法人の銀行残高確認書は、監査法人が直接発送し直接回収します。監査法人が監査証拠として所有します。
監査法人が回収すると言っても、監査法人の権限を持って銀行に確認するものではなく、貴社自身が監査法人に銀行残高確認書への直接回答の許可を与えるという形で行われます(具体的には、貴社の正しい銀行印が付与され、正しい名義人の名前が記載されていおり、届け出住所も一致していないと銀行は決して回答してくれません)。
そのため、銀行残高確認書の作成段階で貴社には、銀行支店別に銀行支店の住所や口座名義、届け出住所を提示もしくは記載が求められ、銀行印の付与が求められます。
また、銀行の回答と貴社の残高とに差異があった場合も、銀行は監査法人には直接回答しません。そのため、差異があった場合は監査法人は貴社に説明を求めます(通常は一致します。小切手の未落ち等で差が出ることがありますがこれは問題ありません)。
ちなみに、海外の口座に対しても実施されます。日本の会計監査実務では、銀行残高確認はよほどの理由がない限り全件確認が原則になっているので、どの監査法人でも同じように全件出します。