会計監査をクリアする在庫の実地棚卸の準備と実施

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◆実地棚卸は会計監査の重要ポイント

在庫の水増しは典型的な粉飾の手段なので、会計監査人はすごく警戒しています。

企業会計の構造上、在庫の金額を上げると、利益が増えます。この構造を利用し在庫金額を水増し計上すれば、利益を増やす粉飾ができます。在庫の水増しによる粉飾は、売上の水増しと並んで典型的な粉飾手段です。そのため会計監査人は、在庫の水増しが行われていないか非常に警戒しています。

とはいえ、会計監人が直接、在庫の実地棚卸ができるわけでもないので、会社が実施する実地棚卸に立ちあいをし、実地棚卸が適切に行われているか自体を確認します。

この結果、”在庫の実地棚卸が適切に実施できていない”と会計監査人に評価されてしまうと、監査意見がでない可能性があります。


◆実地棚卸のゴール

①漏れなく、実際の在庫のみの数量を正確に数えて、確定できている

②良品とそうでない在庫の明示

③実地棚卸の過程で使われる証憑をもれなく保存

※  ①の精度が低いと会計監査が完了できないので、できるまで実地棚卸が終われなくなります。例えば、会計監査人がテストカウントを実施したら、合ってなかった場合、カウントのやり直しになります。


◆実地棚卸の事前準備が8割

上記のゴールを実現するためには、

といった事前準備が必要になります。当日もしくは後日にこれをやり始めると、時間がかかりすぎて決算が終わらなくなります。


◆実地棚卸当日にできるところまでやっておく

①整然と、在庫をカウントし、棚卸原票又は棚卸リストに数量を記載

②数え間違い及び品名・型番等の勘違いの訂正

当日は、実地棚卸マニュアルに従い、整然とカウントし、棚卸数量の記録、集計をすればいいのですが、どうしても、数え間違いや品名違い等が発生します。これは後日になるほど訂正しにくくなるので、なるべく当日に訂正までしておくようにすべきです。


③実地棚卸での数量と在庫データ数量との差異(実地棚卸差異)の理由調査

実地棚卸当日に実地棚卸差異の理由調査までできることはないとは思いますが、なるべく近日中に実施する必要があります。日がたるほど調査しにくくなりますし、合理的な理由がなくこの差異が大きいと会計監査をクリアできなくなる可能性があります。


◆会計監査人は実地棚卸立会で何をしてる

会計監査人は現場を巡回し、抜き取りテストを実施します。棚卸原票や棚卸リストがすべて回収されたかことの確認も行うことがあります。

後日、棚卸当日に控えておいた在庫数量記録を在庫データと照合し整合性を確認します。

ここで会計監査を受ける会社にだけ注意点が一つあります。それは、実地棚卸では会計監査人がOKを出すまでは在庫を動かしてはいけないということです。実地棚卸立会の途中で在庫が動くと会計監査人が在庫の数量を正しく把握できないことになり、実地棚卸のやり直しを求められることがあるからです。やり直しに応えられない場合、監査意見が出ないこともあり得ます。

※  実務では、近日中に実地棚卸のやり直しをしたり、事前にリハーサルしたりすることがあります。


◆実地棚卸の結果は社内報告をした方がよい

実地棚卸は、製造現場や物流倉庫、経理や他部署からの応援、監査役や経営陣が参加します。わりと大きなイベントなので、実地棚卸がどうだったかの社内報告はした方がいいでしょう。

また、実地棚卸差異(実地棚卸数量と、在庫データ数量の差異)の要因分析は、今後の製造現場の改善につながります。積極的に改善に役立てていきましょう。


実地棚卸の差異率は1%以下、実地棚卸の所要時間は長くて半日程度。

ちなみに、私の経験上、上場会社の製造業の現場では実地棚卸差異は1%を超えることはありませんでした。それだけ日常の在庫管理ができているということです。


■実地棚卸チェックリスト

下記は、IPOの準備において、実地棚卸のサポートの際に使用した実地棚卸のチェックリストです。以外と広範囲にチェックしていることご理解いただければと思いのせました。

excelシートです。もし御入用でしたら問い合わせページからでもその旨お伝えいただいたらメールにてお送りします(無料です)。

お問い合せページ

【ひな形】実地棚卸時のチェックポイント【全体】.xlsx

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