固定資産現物と固定資産台帳、一致してませんよね。

IPO準備会社の固定資産の現物と固定資産台帳は一致していないことが普通です。何なら固定資産台帳もなかったりします。

これは、実務上、固定資産を処分した時に除却処理をしていないことが多いためです。

固定資産の除却処理が行われていない理由としては下記を理由としてます。

• 土地以外の固定資産は減価償却により、年々費用化されていくので、除却処理しなくてもいいやと安易に放置されている（税務では指摘を受けないと）。別の話ですが、償却資産税を多く支払っている可能性があります。

• ”一式”などと固定資産台帳に記載しており、一部を除却しても、固定資産台帳の記載を修正できない

• そもそも固定資産現物管理をしておらず、移動も除却も記録していない。

それでは会計監査はクリアできません

固定資産の現物の状況と固定資産台帳と会計の固定資産の計上額が一致している必要があります。

• 現物資産もないのに、会計上資産計上していれば、架空資産でありエラーです。

• 現物資産もないのに、減価償却費が計上されていれば、架空費用でありエラーです。

• 除却損があった場合に、それが計上されていなければ、利益の粉飾です。

要は、現実と会計が一致していなければいけません。現実と会計が一致していること保証するのが会計監査の目的です。

固定資産の実査を実施する必要があります。

まずは、固定資産の実査を行い、固定資産の現物の状況を把握します。

実施時期は期末日にこだわる必要はありません（固定資産は日々単位で動いたりしないから）。１年から３年で１回転するぐらいの頻度です。

まずは手元にある税務で使っている固定資産台帳と見比べながら現物のあるなし、使用状況を確認していきます。

• 固定資産実査のやり方は定型化はされていませんので、どんなやり方でもいいのですが、信頼性確保のためにダブルチェックの実施は必須です。

• 各部署に分担するも、管理部が一手に引き受けるも可能です。

• 固定資産管理№のシールも貼られていないことが多く、固定資産の特定が大変です。

• 固定資産の使用状況や利用可能性も確認してください（遊休）。

最終的には、固定資産台帳を固定資産の現物に合わせて訂正していきます。

• 訂正すると、会計処理や過年度決算書にも影響を与えるので監査法人への相談に時間がかかります。

• 訂正すると、税務処理に影響するので、税理士への相談に時間がかかります。

初めて固定資産実査を実施する場合、短期間では終わらないです。

固定資産の現物管理のレベルを上げる必要があります。

取得時だけでなく、移動や除却、売却、遊休判断といった各段階での現物管理の仕組みを整備する必要が生じます。

要は、固定資産台帳に取得時だけ記録するのではなく、移動や除却、売却、遊休といった固定資産現物の状況の変化を記録するようにするということです（現物が動けば、管理記録も動く）

詳細な管理方法は多岐にわたるので、ここでは省略しますが、例をいくつか挙げておきます。

• 取得時に固定資産管理№を付与する

• 移動可能な固定資産には固定資産管理№シールを用意し、添付する

• 移動報告書をつくらせるか、移動報告をもらい移動を台帳に記録する

• 除却、売却といった固定資産の処分は稟議事項としたり廃棄報告をもらう

• （除却の場合、税務署への証明がいるので、処分時の写真や業者からの廃棄証明書の入手等も必要になります）

• 年に１回は、固定資産の使用状況について調査し、まとめる。

減損損失を計上しなければならないかもしれません。

上場会社の会計には固定資産の減損会計という会計処理があります。

減損会計とは、会計上の評価の結果、将来キャッシュフローを生み出さない固定資産はその処分価格まで簿価を落として減損損失を計上しなければならないというものです。

固定資産実査で明らかになるのは、遊休資産の有無です。遊休資産は使っていないわけですから将来キャッシュフローを稼ぎ出しません。そのため、その処分価格まで簿価を落とさなければなりません。その分、減損損失が計上されます。固定資産実査により、減損損失という損失が生じる可能性があります。

• ちなみに、減損損失を計上しないように遊休資産の存在を隠せば、粉飾したことになります。

会計監査人は固定資産実査で何をする

会計監査人は、会社の固定資産の管理状況が良ければ、非常に重要な固定資産の増減がない限り、固定資産の実査に立ち会うことまではしません。例えば非常に多額な固定資産取得や処分の確認するときや減損会計の対象となっており評価上の確認をするときには会計監査人独自に固定資産の現物を見に行きます。

固定資産実査の結果報告をした方がよい

固定資産実査は製造現場や物流倉庫、経理や他の部署全般が参加します。関係者が多いので社内報告はした方がいいでしょう。

また、固定資産実査で発見された課題は、今後の製造現場の改善につながります。積極的に改善に役立てていきましょう。

追加：リース資産も実査してください

リースした資産についても実査してください。再リースになったリース資産についても実査してください。

リース資産現物の現状がわからなくなることがあります。

• 例えば、リースしたパソコンがどこにあるかわからない。あるとは思うがどれかわからない。リース期間完了後に返却することができず、買取になる。

• リース資産現物があるかないかわからないのに、再リース契約を延長し、リース料を支払い続けた。