キャッシュフロー計算書を作りやすくする勘定科目設定

◆キャッシュフロー計算書を作成しやすくする勘定科目設定があります。

キャッシュフロー計算書は、一般的に下記で作成されます。

① 勘定科目増減分析シート(excelシート)

②キャッシュフロー精算表(excelシート)

③財務報告開示用の組替表(excelシート)


一番作成が大変なのが、①の勘定科目増減分析シートです。

このシートは会計情報(試算表、補助科目明細、総勘定元帳、会計仕訳)を元資料として作成しますが、この際、①の勘定科目分析がしやすい形で、勘定科目や補助科目、適用欄へ記載がしてあると、勘定科目増減分析シートの作る手間や精度が格段に変わってきます。

IPO準備会社や一般の会社では、そのようなキャッシュフロー計算書を作成することを意識した勘定科目や補助科目の設定はされていません。そのため、いきなりキャッシュフロー計算書を作成しても挫折したり、監査に耐えられないキャッシュフロー計算書しか作れないことが多くなります。



◆まず、前提として正しい勘定科目を使う

① 経過勘定の区別

そもそも、経過勘定が区別して計上できていない場合は、経過勘定の区別しての計上も必要。前払金と前払費用は違う。未払金と未払費用は違う。未収入金と未収収益は違う。前受金と前受収益は違う。

※経過勘定の理解と区別 ⇒ 経過勘定を覚える


② 前払金の前渡金の区別

前渡金は仕入活動の際に先渡した資金。買掛金の反対科目と言えます。対して、前払金は仕入活動以外の取引で先渡しした資金。経費(販管費)や固定資産の取得等の仕入活動以外の場合に使用します。

③ 買掛金と未払金の区別

買掛金は仕入活動の際に発生している債務(お金は未渡し)。対して、未払金は仕入活動以外の取引で発生している債務(お金は未渡し)。経費(販管費)や固定資産の取得等の仕入活動以外の場合に使用します。


◆次に、独立設定した方がいい勘定(補助)科目の紹介

上記のように、勘定科目を正しく使えるようになっていることを前提にして、キャッシュフロー計算書を作成するために、独立設定しておいた方がいい勘定科目は以下になります。

<支払利息・受取利息関連>

  • 前払利息、未払利息

  • 未収利息、前受利息

営業活動CFにて、支払利息と受取利息の経過勘定はその期首期末増減を記載しなければならないので、独立勘定になっていると便利


<未払金の細分化>

  • 設備未払金

有形固定資産や無形固定資産に係るCFについては、投資活動CFにて、独立掲記されます。有形固定資産および無形固定資産を取得する際に発生しやすいのが未払金であり、固定資産の取得の際に生じる未払金は設備未払金として勘定科目にて区別しておくことが便利です。


◆あとは、自社の事情に合わせて会計ソフトの使い方をアレンジ

キャッシュフロー計算書を作成するために、①の勘定科目増減分析シートを作成するには、経過勘定や未払金等は最初から営業活動CF、投資活動CF、財務活動CFに区別しやすいようにしてあることが望ましいです。しかし、日常発生しない取引のために、勘定科目を細分化しすぎるとそれはそれで不効率になります。

まずは、上記に記述しているように、

  1. 正しい科目を使う(これで、だいぶ営業活動CF、投資活動CF、財務活動CFが区別しやすくなります)

  2. 独立設定した方がいい勘定科目を設定する

を実施し、

貴社の個別事情に合わせてアレンジしていくことが大事になります。



キャッシュフロー計算書の作成の仕方の概要は下記の会計基準等に記載されているのですが、実務で適用するには足りないところもあります。

  • 『連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準 (企業会計審議会)』

  • 『連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針( 会計制度委員会報告第8号) 』

キャッシュフロー計算書の作成についてはexcelシートで実施することが通常で、上記の会計基準等に記載のものを個別事情に応じてアレンジして使われていることが多いです。

ただ、一から作るのはお勧めしていません。くわしくは以下のリンク先に記載しています。

IPO キャッシュフロー計算書を一から作るのは難しい