IPO前に、経過勘定を覚える

◆IPOでは、会計を税務会計から財務会計へ変える必要があります

年1回だけ実施される税務申告のみを目的として作成される決算書では、経過勘定(前受収益、未払費用、未収収益、前払費用)と前受金、未払金、未収入金、前払金とを区別することが強く求められていないので、経過勘定と前受金、未払金、未収入金、前払金とが混同されていることが普通です。

しかし、IPOを前提とすれば、財務会計(利害関係者に会社の業績、財政状態、キャッシュフローの状況を報告するための会計)を実行することを求められますからでは、貸借対照表も厳密に作成する必要があります。そのため、財務会計では経過勘定の区別は重要になります。

税務会計は、税務申告を効率的に行うための会計。財務会計は利害関係者に報告するための会計です。特別にリクエストしない限り大多数の中小企業が税理士事務所に作成依頼している決算書は税務会計で作成されています。


◆前受金と前受収益は違う。未払金と未払費用は違う。未収入金と未収収益は違う。前払金と前払費用は違う。

企業会計原則では、前受収益、未払費用、未収収益、前払費用は経過勘定と呼ばれ、前受金、未払金、未収入金、前払金とは明確に区別されています。

ざっくりいうと、前者が、①契約に基づき継続的に発生する 債権債務である のに対し、後者は、単発で確定している債権債務であるということ が違いです。

例えば、貸付金の受取利息を前受した場合、受取利息は契約に基づき継続的に発生するので、前受収益になります。対して、商品の販売代金を商品引き渡しより先に受け取っているばあい、単発で確定しているので、前受金になります。

※前払金は前渡金といわれることも多くあります。


企業の営業取引から発生した金銭債権債務のうち、販売によって生じる売掛金、仕入によって生じる買掛金、経過勘定を除いたものを、前受金、未払金、未収入金、前払金と言います。

なので、経過勘定を明確に区別できるようにすれば、他の区別もつきやすくなります。


企業会計原則では、経過勘定について、以下のように定義しています。

特徴は、①一定の契約に従い ②継続しての役務提供 ですので、この特徴を覚えてください。

前払費用

前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の費用となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。また、前払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による前払金とは区別しなければならない。

前受収益

前受収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の収益となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、前受収益は、かかる役務提供契約以外の契約等による前受金とは区別しなければならない。

未払費用

未払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、すでに提供された役務に対していまだその対価の支払が終らないものをいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過に伴いすでに当期の費用として発生しているものであるから、これを当期の損益計算に計上するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、未払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による未払金とは区別しなければならない。

未収収益

未収収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、すでに提供した役務に対していまだその対価の支払を受けていないものをいう。従って、このような役務に対する対価は時間の経過に伴いすでに当期の収益として発生しているものであるから、これを当期の損益計算に計上するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。また、未収収益は、かかる役務提供契約以外の契約等による未収金とは区別しなければならない。