IPO キャッシュフロー計算書を一から作るのは難しい

◆上場会社特有の財務諸表にキャッシュフロー計算書があります。

IPOするなら、キャッシュフロー計算書が作成できるようにならなければなりません。キャッシュフロー計算書は上場会社しか作成しない財務諸表ですが、有価証券報告書に含まれる非常に重要な財務諸表で、監査法人の会計監査の対象にもなっています。


◆キャッシュフロー計算書は誰でも一から作れるか?

結論から言うと、キャッシュフロー計算書を一から作成した経験者がいない限り、かなり難しいですし、やらない方がいいと思います。

実務上、キャッシュフロー計算書の作成は、会計ソフトではなく、ほぼexcelシートで行われています。ちょっと特殊なexcelシートとなるので、キャッシュフロー計算書作成excelシートの作成はちょっとした職人技を必要としています。

加えて、キャッシュフロー計算書は、損益計算書、貸借対照表や総勘定元帳や仕訳といったすでにある会計情報をもとに作成するので、貴社がどんなビジネスを行い、どんな会計処理を行っているのか理解する力が必要になります。

①キャッシュフロー計算書作成基準への理解のみならず、②貴社の会計処理に対する理解力という二つの要件が必要となるため、キャッシュフロー計算書作成excelシートの最初の作成は誰にでもすぐにできるというわけにはいかないのです。


◆では、キャッシュフロー計算書を一から作成しなければならないときはどうしたらいいか?

これも、結論から言いますと、

①キャッシュフロー計算書を一から作成したことがあるか又は作成できる+②貴社の会計処理や仕訳を読み解くことができる人に、最初のキャッシュフロー計算書作成excelシートを作成してもらうのがいいでしょう。

そんな人が雇えていれば一番いいですが、そうでない場合は外注する必要があります。

(昔はたまに面倒見のいい監査法人の担当者が自己監査にならないように注意しながら監査と称しながら修正指示を繰り返し繰り返し一緒に時間をかけて作り上げてくれることもありましたが…)。

何も知らない経理担当者がキャッシュフロー計算書を一から作成できるレベルになるには相当な時間と労力を要します。


◆キャッシュフロー計算書の作成自体は一般の経理担当者でできます。

キャッシュフロー計算書の作成基準自体は、たった二つだけです。しかも、かなり細かいところまで基準で作成方法を説明してくれているので、これらの基準さえ理解できればキャッシュフロー計算書を作成できます。好き嫌いはあると思いますが、一般の経理担当者が理解適用できるレベルの基準です。

  • 『連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準 (企業会計審議会)』

  • 『連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針( 会計制度委員会報告第8号) 』


一からキャッシュフロー計算書作成excelシートを作成することはできなくても、いったん形ができてしまえば、キャッシュフロー計算書の作成は、ほぼ毎回繰り返しの作業になります。

何回か作成方法のレクチャーを受けて作成してみれば、普通の経理担当者であればたいてい作成できるようになってます。ただ、キャッシュフロー計算書は会社全体の資金の流れを開示するので、会社全体の資金の流れを理解している人が作成することが望ましいです。


もし、自分達でわからない複雑な論点がでてきたら…。

そのたびに、積極的に監査法人に相談して、適切な指導を受けてしまいましょう。どうせ監査を受けるんですから。


ちなみに、

私がキャッシュフロー計算書を一から作成した時は、一週間程度かかりました。キャッシュフロー計算書の作成過程は十分に熟知していますが、そのもととなる会社のビジネスの理解、会計情報の読み解きと当てはめに時間がかかったのです。それでも、監査法人のチェックを受けて多くの修正がありました。3回ぐらいチェックを受けてやっと完成するものと思います。


私の経験上、キャッシュフロー計算書の作成をexcelではなく会計ソフトで作成している会社は1社だけありました(連結子会社100社を超える大会社で、相当高度な連結会計ソフトを使っておられます)。他の会社は全部、オリジナル手作りexcelシートです。皆それぞれの様式で作成されているところを見ると上場会社で使えるほどのキャッシュフロー計算書作成excelシートひな形は、インターネット上にも出回っていないようです。


ちなみに、キャッシュフロー計算書を作成する方法には、直接法と間接法がありますが、上場会社のほとんどが間接法を採用しています。間接法の方が連結のキャッシュフロー計算書を作成する過程が簡単だからです。