9-8 公認会計士がCFOにご説明:子会社での不正は起こりやすい

◆子会社の不正防止は難しい

子会社のガバナンスや業務管理体制は親会社ほどは整っておらず、子会社の社長は相当の権力を持ちます。しかも、親会社は業績管理をしたとしても、もう少し踏み込んで監督まで十分に実施しません。そのため、子会社での不正は起こりやすい構造になっています。


少し想像すると、

子会社の社長は、その子会社では最高権限者であり、しかも取締役や監査役等からのガバナンスをほとんど受けていません。子会社の中で、子会社の社長の不正を諫めるもの者はいないのではないでしょうか。

では、親会社の役員陣はどうでしょう。権限的には一番監督効果があります。しかし、親会社の役員陣は子会社の業績にしか興味がなく、子会社の経営が真っ当に行われるかどうかは子会社の社長の責任の問題であり、親会社の役員が監督しなければならないものではないと考えています。

では、親会社からの管理監督はどうなっているか。例えば親会社の監査役や内部監査部門は一定の監督効果は期待できますが、社外の存在であり、しかも年に1回現地往査すればいいというようではその監督効果も限定的になります。

親会社の経理が連結で監督しているという意見もありますが、子会社の社長は親会社の経理担当者よりずっと上位者です。事実調査する権限もありません。監督機能を期待する方が無理があるでしょう。


そう考えると、子会社の社長は、業績達成のプレッシャーを常に受けながら、さらに不正を可能とする権限を持っています。

子会社の社長には、①不正の動機があり、正当化があり、機会があります。組織として独立している分、子会社の経営者は組織内での権限が大きいわりに、業績以外、監督されることが少ないので、親会社の経営者よりよっぽど不正を行いやすいといえるでしょう。


◆子会社の不正発覚は、当然、グループ全社の社会的信頼にダメージを与えます。

日本の会社では、親会社の社長の権限が強く、親会社の社長の下に、親会社役員陣と子会社社長が並列についている形になっていることが多いです。この形であれば、当然、子会社の経営者が不正を行った場合、責任は親会社の社長が負うことになります。

ただ、これでガバナンスとして十分なのか、自社の組織の状況の変化に応じて、考え直す必要があります。


◆親会社やグループでもその防止を図る仕組設定が必要になります。

例えば以下、

①外部通報、内部通報制度をグループ会社も範囲に入れて機能させる

②親会社の監査役や内部監査人による監督を子会社にも実施する

③親会社の経営レベル(取締役)でのガバナンスをきかせる

④経理や財務機能のシェアードサービスを親会社もしくは近くの子会社に実施する

⑤親会社にて子会社管理の部署を設ける

⑥親会社の営業や製造、経理といった各部署が、子会社の同じ機能の部署を横ぐしで監督する


①から順に実現しやすい施策で、⑤と⑥は実現できないでしょう。③親会社の取締役が子会社担当取締役になれば、親会社で子会社についての責任を負う役員が明確になりガバナンスが利きやすくなります。