9-6 公認会計士がCFOにご説明:粉飾決算の事例とその対応

◆証券取引等監視委員会は「開示検査事例集」を公表。

証券取引等監視委員会は開示検査の最近の取組みや開示検査で判明した開示規制違反の内容,その背景・原因,是正策等の概要を取りまとめて公表しています。

経理部門、内部監査部門に携わっている方は、ぜひ、「開示検査事例集」を検索していただいて一読されることをお勧めします。

こういうのを読むと、監査に携わる者として、緊張感が高まります。

ここに、開示規制違反とは、端的に言うと、粉飾決算の事例です。


◆粉飾事例は売上高に関するものが一番多い

勘定科目別に見ると粉飾の事例としては、

  1. 売上高に関連するものが一番多い。

  2. 資産評価に関連するものも多い。

  3. 特別損益に関連するものが多い。


上記を、簡単に推測すると、売上高は利害関係者が一番注目する勘定科目であることから、プレッシャーが最も強いため。資産評価は、見積もりを伴うため、判断や主観を入れ込むことがしやすい。また、経理部門だけで判断が可能。特別損益は、通常は発生せず、例外・臨時的な処理であることから操作しやすい。と言えます。

ただ、売上高の中でも、架空売上が多く上げられています。架空ですから、意図的であることがあきらかであり、さらに、営業部門や経営陣の関与が必要であることから特定部門ではなく全社的に実行したことに留意する必要があります。


「粉飾決算」の再発防止策は、内部統制を有効に機能させること

上記の粉飾決算が生じた理由としては、下記があげられており、

  1. 会社のガバナンス体制の不備、機能不全。

  2. 内部管理体制の不備


例えば、

経営者、取締役会、監査役、内部監査部門、財務管理部門での相互牽制機能が働いていない。監査役が営業に参加しており独立性を欠いていた。契約書や証憑のダブルチェックが実施されていない、口頭でも会計処理が実施されていた、そもそも会計処理に対する職務分掌が無く一人でなんでもできる状態にあった。


その裏返しとして、再発防止策として、下記があげられています。

  1. 会社のガバナンス体制の整備、機能の健全化

  2. 内部管理体制の整備


◆相当な知見を備えた人材の確保が必要

内部統制の仕組みが適切に整備されており、健全に運用されているか?

内部統制は会社全体に張り巡らされた仕組みのため、相当の知見を備えないと、内部統制が有効に機能しているか評価・判断するのは難しいですが、上場会社には、その相当な知見を備えた人材を社内に確保していることが求められていると言えます。