9-5 「収益認識に関する会計基準」に対する準備はいつから?

◆「収益認識に関する会計基準」が設けられた理由

■国際会計基準(IFRS)に、日本も合わせるためです。

これは何も珍しいことではなく、IFRSで決まっている会計基準は、何年も前から、順々に日本の会計基準に取り入れられ続けています。日本企業が国際市場で信頼されるためには、当然必要なことです。


◆「収益認識に関する会計基準」が設けられて何が必要になるのか?

  1. 根本的に売上計上のルールが変わるので、売上計上の仕方(計上時期、計上額)について全面的に見直し検討が必要になります。

  2. 売上計上時期や計上額に変更があった場合、社内や社外への説明が必要になります。

  3. 売上計上の事務処理が変わります。基幹システム、会計システムの変更を伴うかもしれません。

  4. 財務会計と税務会計に乖離している部分があり、事務処理の手間が増えます。

  5. 連結子会社でも検討が必要になります(連結会計方針の統一の観点から)


収益認識に関する会計基準の適用方針について、公開会社や大会社であれば、対外的に説明できるようにしておく必要があります(特に会計監査人や監査法人への説明が必要になります)。

中小企業が株式公開を目指し、株式公開の準備の段階に入ったときに、収益の計上時期や計上金額についても上場企業と同等の検討をします。同じ会計原則に基づいているはずなのですが、中小企業の税務会計と上場企業の財務会計では目的が異なることから乖離が多くみられるのが一般的で、収益の計上会計処理の見直しには結構な手間がかかることが多いです。会計の専門知識はもちろん必要ですが、現場の業務がどのように行われているか理解ができていないことも多く調査が必要になります。


◆「収益認識に関する会計基準」の適用時期はいつ?

・強制適用は、令和2 年4 月1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から



◆中小企業にも適用されるの?

純理論的には適用されると言えるのですが、実務上は適用する会社は稀でしょう。

日本の中小企業は、 法人税法、法人税基本通達に従った会計処理を採用していることが一般的です。企業会計原則及び収益認識に関する会計基準を適用することを基本としながらも、実務での詳細な適用については法人税の基本通達に従っています。

中小企業(※1)従来通りの企業会計原則の収益基準が適用され、新収益会計基準も任意適用も可能であるとされています。

(※1)会社法上の大会社(資本金5億円以上又は負債200億円以上の株式会社)以外の会社


◆「収益認識に関する会計基準」に対する準備はいつまでに終える?

■適用開始の1年前、予算設定に反映させたいならその半年前


・強制適用までの間に、新しい実務指針や情報が出てくるだろうから、”ぎりぎり”まで様子を見ようとするのは、それはそれで、正解だと思います。

・ただ、多種類の事業を営んでいたり、グループ会社の数が多い場合、基幹システムの変更を伴う場合、その”ぎりぎり”はいつになるでしょうか。

・現状の把握、収益計上ルールの決定、実際の情報収集、情報加工プロセスの構築、安定運用を逆算して見てください。

・「収益認識に関する会計基準」に即した現状調査なら適用開始時期の1年前に終えておいた方がいいのではないでしょうか?経理部中心でできるはずです。さっさと検討して、社内に説明、根回しを始めましょう。

・予算は前年度に作りますので、予算を「収益認識に関する会計基準」を適用して作成したいなら、適用の半年前には、適用方針が決まっている必要があります。逆算開始時期を間違えないでくださいね。



財務会計基準機構

https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/accounting_standards/y2018/2018-0330.html

国税庁

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2018/02.htm

次に、粉飾決算(利益の過大計上)について解説しています。

9-6 公認会計士がCFOにご説明:粉飾決算の事例とその対応