9-4 公認会計士がCFOにご説明:継続企業の前提に関する注記

本業の業績が悪化傾向のある場合、CFOが想定しているよりも早い場面で、継続企業の前提に関する注記の要否検討が必要になることがあると知っておいてください。

◆継続企業の前提に関する注記は本業にマイナスの影響を与えます

この注記は、会社にとって重大な意味を持つ注記です。

継続企業の前提に関する注記は、会計上は、会社がつぶれそうと言っているわけではなく、業績の悪化や、資金繰りの悪化等、企業の継続性に疑義を与えるような状況があるので、会計報告の前提となる継続性の原則に影響がありますよと説明しているだけです。

ただ、実務上この注記をつけている会社は、一般的な目からすれば、継続していけるかどうか疑義があるということを公表しているのと同義にとらえられます。

具体的には、下記の変更がマイナス方向に求められます。

  • 仕入先からの仕入条件の変更

  • 得意先からの取引条件の変更

  • 金融機関からの借入条件の変更

上場企業であれば、会計報告は一般に公表されており、仕入先や取引先、取引金融機関はその会計報告を与信に利用しているので、ネガティブな情報がでれば、当然与信に影響があります。

与信が悪化すれば、会社の本業全体の悪化につながりかねないません。

このように本業に与える影響が大きな注記であるため、この注記の記載の要否を検討する役割を負うのはCFO以上ということになります。

上場会社であれば、監査法人が協議の相手とするのはいつもの経理部長ではなく、CFOもしくは経営者になります。



さて、ここからは、一段高度で、重要な説明です。

◆他にも会計上の損失が生じることも想定にいれておく

本業の業績が悪化した場合、本業の損失以外に、会計上の損失を計上しなければならない場合があります。

例えば、本業が悪化すれば、まず、減損会計により、固定資産に対する減損損失の計上が検討されます。次に、子会社への貸付金や投資に対して、評価損失の計上が検討されます。


◆想定よりも早い時点での検討、対応が必要

このように、継続企業の前提に関する注記の要否は、本業の損失以外に、会計上の損失も加味して考える必要があるので、

本業の業績が悪化傾向のある場合、CFOが想定しているよりも早い場面で、継続企業の前提に関する注記の要否検討が必要になることがあると知っておいてください。

  • 本業の悪化により、減損損失や、子会社への貸付金の評価下げ、子会社株式の評価損計上の検討が必要になる。

  • 上記があると、本業の悪化以外の要素により想定よりも早い段階で、継続企業の前提に関する注記の要否の検討をしなければなら無くなる。

  • 本業の悪化以外の、会計上の損失については、会計にかかわる人間以外にはほぼ理解されない。つまり、会社の中の大多数の人には相当の説明が必要であり、社内調整が非常に大変。

  • いきなり継続企業の前提に関する注記の検討がなされることは本当に稀で、その前段階として、減損損失や、子会社への貸付金の評価下げ、子会社株式の評価損計上の検討がまず行われます。


◆年単位で前もって検討する

継続企業の前提に関する注記は、本業にも影響を与える重大な注記であるため、

通常、1年かけて、もしくは2年前程度から監査法人から指摘もしくは協議の申し込みがなされます。

継続企業の前提に関する注記の要否は、監査法人からの指摘があるとはいえ、最終決定は監査法人ではなく、自社で主導的に決定すべきものです。


次に、新会計基準の導入の際の留意事項について説明しています

9-5 公認会計士がCFOにご説明:収益に関する会計基準の導入