9-3 公認会計士がCFOにご説明:子会社の業績悪化が親会社に与える影響

■子会社の業績悪化は、親会社の決算書にマイナスの影響を与えます

親会社の立場からすると、親会社と子会社は別の存在であり、子会社の経営悪化は子会社の責任。いわば、子会社の社長の責任。これは、経営の観点からも正しい。

正しいのですが、それは子会社の業績悪化がある程度の段階まで収まっている場合にしか、正しいとは言えません。

通常、親会社は子会社に対して投融資を実施しています。子会社の業績悪化は、親会社が実施しているこの投融資の会計評価に影響を与え、親会社の決算書に損失を計上させることがあります。

具体的には、

①子会社への貸付金に対する貸倒引当金

通常は親会社が経営支援を行うのだから子会社への貸付金に貸し倒れの懸念が生じることはありません。でも、子会社の業績悪化が長引いたり、親会社自身に体力がなくなってくると子会社への追加支援が行えなくなってきます。その時には、子会社への貸付金についても、貸倒引当金を見積り計上する必要が出てきます。子会社への貸付金に貸倒引当金を計上すると当然、その分の損失が親会社の決算書に生じます。

親会社の業績が良ければいいのですが、えてして、このような場合は親会社の業績も悪いことが多く。親会社は本業の業績悪化のダメージに加えて、子会社への融資の評価下げにともなう損失を被ることになります。


②子会社株式への強制評価減

子会社というからには、親会社は子会社の株式を保有しています。

子会社の業績の悪化が続き、業績回復の可能性の相当に高い事業計画が作れないようであれば、子会社株式の評価も下げる必要が出てきます。その分の損失当然に親会社の決算書に計上されます。

子会社への投融資に対する会計上の評価は、親会社の支援姿勢に大きな影響を受けます。親会社の支援が確約されたり、高い確率で実施されることが見込まれるのであれば、回収可能性や回復可能性は見込まれるとして評価下げは見送られます。

が、逆に親会社の支援が見込めないとなれば、回収可能性、回復可能性はないとして評価下げが実施されます。

子会社の業績悪化は、子会社への投融資の評価下げという形で、親会社の決算にマイナスの影響を与えます。


◆子会社の投融資についての損失計上は一気に顕在化する

子会社への貸付金への貸倒引当金の計上や、子会社株式への減損損失は、親会社が支援を続けている限り発生しにくくなっています。

ただ、子会社への支援も無限に続けられるわけではなく、子会社を支えることができなくなった時が来ると、累積された子会社の業績悪化の影響が一気に顕在化します。

次に、GC、継続企業の前提に関する注記が付与された場合、取引先に与信を下げられるなど、本業にマイナスの影響があります。

⇒ 9-4 公認会計士がCFOにご説明:継続企業の前提に関する注記