IPO 過去の誤謬の訂正と計算書類の修正と税務申告

◆過去の誤謬についての関連基準等

  • 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準「過年度遡及基準」

  • 国税庁:法人が「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を適用した場合の税務処理について(別紙)


◆会社法への過年度遡及基準適用の考え方

期首の資産、負債及び純資産の額に反映させる

計算書類は、単年度開示が原則であり、過年度遡及基準の言うところの「表示する財務諸表のうち、最も古い期間」は、当期の決算書ということになるので、「表示期間より前の期間に関する遡及適用による累積的影響額」は、当期の計算書類の期首の資産、負債及び純資産の額に反映させることになる。


◆会社法計算書類での対応

1)会計仕訳及び、帳簿、計算書類への対応

会社法計算書類は当期分の数字しか載っていませんので、「表示する財務諸表の一番古い期間の期首」は当期の期首になります。

→遡及適用による累積的影響額を当期首の会計帳簿に反映させることになります。

⇒具体的には、期首利益剰余金の修正仕訳を当期に計上します

  • 修正仕訳は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書すべてに反映されます。

2)注記が必要になります

  • 当期誤謬額の内容

  • 当該事業年度の期首における純資産額に対する影響額




◆税務での過年度遡及基準適用の考え方

課税所得計算に影響がないなら、期首の修正再表示の影響だけを、当期の別表五(一)で期首剰余金に調整すればいい。

  • 課税所得計算に影響があるなら、修正申告してください。とのスタンス。


◆税務申告での対応

■申告書の修正

1)過去の誤謬の訂正があった場合(税務上は修正を要しない場合)

例えば、前期に土地の減損損失の計上漏れがあり、それを当期期首に修正した場合

会計上の修正再表示が行われたとしても、過年度及び当期の課税所得の計算に影響はない。

  • 過年度の修正申告は不要

  • 当期の申告書の別表五(一)での調整が必要(利益剰余金の前期末残高と当期首残高がズレた分の調整)

2)過去の誤謬の訂正があった場合(税務上も是正を要する場合)

例えば、過年度の売上の計上漏れ、費用の過大計上等があり、それを当期首に修正した場合

会計上の修正再表示が行われた場合、過年度及び当期の課税所得の計算に影響があります。

  • 過年度の修正申告を行って、過年度の課税所得計算を是正する

  • 当期の申告書の調整は、過年度の修正申告がすんでいるなら不要


■過年度事項の修正の内容を記載した書類

過年度事項の修正の内容を記載した書類とは、会計方針の変更や過去の誤謬の内容、理由・原因、生じた事業年度、遡及処理の前後で影響を受ける勘定科目・金額などを任意の様式記載したもの

  • 会計計算規則に定めらる注記表にこれらの事項が記載されていれば、「過年度事項の修正の内容を記載した書類」の作成添付は不要。確定申告書には注記表の添付で済みます。

  • 会計計算規則に定めらる注記表にこれらの事項が記載されていなければ、「過年度事項の修正の内容を記載した書類」の作成と確定申告書への添付が必要になります、

過年度事項の修正の内容を記載した書類の記載例は、国税庁:法人が「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を適用した場合の税務処理について(別紙)を検索して参照してください。