決算業務の効率化を図るための具体的方法

◆IPO準備では、決算業務の効率化の重要度が上がります。

会計の仕訳には、下記の2種類があります。

  • 日常の取引や業務に基づく日常仕訳

  • 四半期末や期末にのみ行われる経理の会計判断に基づく決算仕訳

大部分の会社が行っている税務会計では、決算仕訳はあまり必要がありません。しかし、IPOを目指す会社・上場会社では、決算仕訳は大きく増えます。

例えば、発生主義に基づいて未払費用等の経過勘定を上げる仕訳、原価計算、会計上在庫評価や債権評価を行う仕訳、会計上の見積りを行う仕訳、減損会計、税効果会計等が挙げられます。

IPOを目指す会社・上場会社では、経理判断に基づく決算仕訳が大きく増え、経理が難しくなります。そのため、IPOを目指すと、決算業務の効率化の重要度が大きく上がります。


◆決算作業を見える化する具体的方法

難しくなり増えた決算業務は、経理担当者に単に分担するだけでで乗り切れるほど甘くはありません。

組織的に対応できるように、入手すべき情報を明らかにし、実施すべき作業の全体をつかみ、ダブルチェック、承認の体制を作りきらないと、締め切りまでに判断ミスなく決算業務を完了することはできません。

①決算スケジュール(決算タスク管理表)を作成する。

日程、締め切り、担当者、作成が必要な資料、作成者、チェック者、承認者、他部署への資料依頼時期を明記した一覧表を作成しましょう

  • ポイントは、他部署への資料依頼をちゃんとルーチンワークにしておくことです。経理作業は情報が入手できないと始まりません。

  • また、決算スケジュールの作成と進捗管理をするプロジェクトマネージャーをちゃんと毎回決めましょう。


②決算業務を効率化する決算ファイルを作成する。

決算ファイルとは、決算業務での入手情報から計算判断過程(excelシート)を紙面で打ち出し、綴りこんだ紙面ファイルです。

  • すべての入手情報を綴りこみます(この入手情報には名前を必ず付けます)

  • すべての計算判断過程も綴りこみます(この計算資料にも名前を必ず付けます)

  • 決算業務をすべて洗い出しリストアップしたタスクの一覧表も作成し綴りこみます

  • 仕切り紙を挟み、インデックスシールも付けます。

  • 決算ファイル名を付けます。例)2019年3月期_第1四半期 。

  • 決算業務のタスクを完了するごとに紙面を打ち出し、決算ファイルに綴りこんでいきます

  • 最後は、上長が全体に対して最終確認を行います。


■決算ファイルを作成するメリット

  • 決算業務の全体像をつかめます

  • 決算業務の分担、進捗管理を可能にします

  • 上記を、実物として目で見ることができます(タスク表が完了印と承認印でうまり、インデックスが紙資料ですべて埋まると決算業務が完了です)

  • 作業過程が確実に保存できます

  • 次回の決算業務で参考にできます

  • 監査対応が効率化します(そのまま監査人に提示できる)

※慣れてくれば、すべてを紙面で打ち出す必要はなくなってきますが、安定運用ができるまでは紙面打ち出しでの決算ファイル作成をお勧めします。決算ファイルを紙面ではなく、データで作成されている会社もあります。


■決算業務への決算ファイル導入を成功させるコツ

導入の最初が肝心です。徐々に完成度をあげていくのではなく、最初から完成度高く作りこんでいくおくことが必要です。

決算ファイル作成は、一人ではなく、複数で作業することを前提にしています。何人かで作業するには、むしろ最初にルールや様式を決めておいた方が作業への参加への協力が得られやすいです。

最初から、きれいなファイルを準備し、モレのないインデックス、タスク表を準備すべきです。


◆開示資料ファイルも作る

四半期報告書、有価証券報告書、会社法決算書において注記や記載すべき事項は多岐にわたります。そのような記載を効率的に行うため、決算ファイルと同様のファイルを開示ファイルとして紙面で作成します。


◆監査対応も効率化します

会計監査では決算業務を特に重点的に検証します。入手情報や判断過程、計算過程を聞かれることが頻繁にありますが、決算ファイルを監査人に見せてしまえば、そのような監査人の検証や質問に効果的に対応できます。その分だけ監査対応に割かれる時間が削減でき、別の作業を進めることができるようになります。