IPO 未払金と未払費用は区別しないといけません

◆企業会計原則による未払金と未払費用の区別

■未払費用と未払金は同じではない

ざっくりととらえると、

未払費用は、契約にしたがい継続的に発生している債務です。

未払金は、逐一確定している単発ものの債務です


未払費用については、企業会計原則では以下のように定義しています。

未払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、すでに提供された役務に対していまだその対価の支払が終らないものをいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過に伴いすでに当期の費用として発生しているものであるから、これを当期の損益計算に計上するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない(企業会計原則注解5抜粋)

ポイントは①契約 ②継続した役務の提供の二つです。

例)未払賃金給与、未払社会保険料、未払借入利息、未払賃借料、等


未払金については、企業会計原則上定義があるわけではないですが、すでに提供された財や役務に対してその対価の支払が終わっていないものであり、その支払義務および金額が確定しているものであると言えます。ただし、仕入に伴うものについては未払金ではなく買掛金とします。

例)固定資産の購入、消耗品の購入、電気代、ガス代 、等


◆未払従業員賞与の会計処理

IPOを前提とすると『未払従業員賞与の財務諸表における表示科目について』という基準に基づいて会計処理を行う必要があります。

従業員賞与についても、発生主義に基づき、会計処理を行います。

①支給額が確定しており、賞与支給額が支給対象期間に対応して算定される場合、「未払費用」。

②支給額が確定しており、賞与支給額が支給対象期間以外の方法で算定される場合、「未払金」。

③支給額が確定していないが、賞与支給見込み額が算定できる場合、{賞与引当金」。


①については、労務契約に従い継続的に発生しているので「未払費用」になります。

②については、単発もので支払義務も支払金額も確定しているので「未払金」になります。

③については、「引当金」(賞与引当金)になります。引当金については、今後説明しますが、確定金額ではなく見積金額を計上することに特徴があります。


◆IPOでは、会計を税務会計から財務会計へ変える必要があります。

年1回だけ実施される税務申告のみを目的として作成される決算書では、未払費用と未払金を区別することが強く求められていないので、未払費用が計上されていないか、未払金と混同されていることが普通です。

しかし、IPOを前提とすれば、財務会計(利害関係者に会社の業績、財政状態、キャッシュフローの状況を報告するための会計)を実行することを求められますからでは、貸借対照表も厳密に作成する必要があります。

そのため、未払金と未払費用の区別は重要になります。


◆キャッシュフロー計算書を作成するためにも、未払費用と未払金の区別が重要

また、IPOでは、キャッシュフロー計算を作成しますが、そのキャッシュフロー計算書の作成のためには未払金と未払費用を区別しておくことは大事になりますし、さらに未払金も未払費用もさらに内訳ごとに区分しておくことが望ましいです。

さわりだけお伝えしておくと、未払金のうち、固定資産投資や投資有価証券投資に関わるものは、他の未払金と区別できるように会計記帳しておくことが望まれます(勘定科目を別掲したり、補助科目を設定しておく)。未払費用のうち、利息支払に係るものは他の未払費用と区別できるように会計記帳しておくことが望まれます(勘定科目を別掲したり、補助科目を設定しておく)。


◆税務と財務会計の基本的な考え方の違い

税務は、債務確定主義により損金を計上するのが原則で、経過勘定である未払費用は、毎期継続適用を要件として損金と認められるにすぎず、ある意味、未払費用は未払金の一部として取り扱われています。

財務会計では、発生主義により費用を計上するのが原則なので、当然に経過勘定である未払費用を計上する必要があり、未払金とは区別されることが求められます。


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