IPOと企業会計原則、会計基準、適用指針/実務指針
◆IPOするなら、『会計監査六法』を買ってください。
IPO準備や会社法監査を受ける会社は、「我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」を守らなければなりません。
では、その「我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」はどうすれば知ることができるのか?
『会計監査六法』日本公認会計協会、企業会計基準委員会共編/日本公認会計士協会出版局
に、まとめて記載されています(国際会計基準は除く)。9千円弱する大きくて重い書籍ですが買ってもらうのが一番楽だと思います。
インターネットからの情報入手、企業会計基準委員会、日本公認会計協会他のサイトにてそれぞれの管轄の情報は公開されていますが、まとめてくれているわけではないので、一覧性がなく、非常に扱いづらいです。書籍にてお持ちされることを強くお勧めします。
下記は、監査報告書に記載される監査意見の一部抜粋ですが、「我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」に準拠しているかどうかが、監査意見の内容となっています。
当監査法人は、上記の財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、○○株式会社の×年×月×日現在の財政状態並びに同日をもって終了する事業年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を、すべての重要な点において適正に表示しているものと認める。
◆企業会計基準を、理解し適用できなければなりません。
「我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」ですが、大きくとらえると下記のように構成されます。①からの順に詳細になっていきます。
①企業会計原則
②各会計基準
③各会計基準に対する適用指針/実務指針
④さらに、個別論点についての解説
IPO準備企業や上場企業は「我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」を遵守してなければなりません。これは、ほぼ会計監査六法に載っているので、会計監査六法に記載の会計基準等を押さえれば大丈夫です。※1
ということは、IPO準備企業や上場企業の経理担当(経理責任者)は、すくなくとも1回は会計監査六法に載っている会計基準等に目を通しており、自社に関連する会計基準等は理解し適用できる必要があります。
IPO前の会社には、そんなことができる人材はいないのが普通です。
では、どうすればいいのか?
誰かが勉強するか、
教えてくれる人材を雇うか、
できる人材を雇うか、
外注するかしかありません。
自社にあった現実的な方法を選んでください。
※1 会計監査六法紙面版は1年に一度の発行なので、最新基準は載っていないことがあります。最新基準は公認会計士協会のHPで公表しています。また、業界特有の会計基準や国際会計基準は載っていません。
◆監査法人は多少は教えてくれますが、最終判断は自社でする必要があります。
■あくまで自社で判断する
会計監査を担当する監査法人は、企業とは独立の立場から、監査を実施します(これを独立性と言います)。なぜ、独立の立場が大事かというと、企業の味方の立場での保証なんて、誰にも信頼されないからです(これを自己監査と言います)。この、独立性を守る観点から、会計基準の適用の最終判断はあくまで、会社自身でやる必要があります。
また、監査時間の見積りの中には、詳細な会計基準のレクチャーの時間が含まれていないのが普通です。難しい会計基準等の導入時には、解説や勉強会を実施したりすることもありますが、本来それは会社自身での実施が求められます。
■監査法人との事前相談は必須
監査法人はあくまで会計監査を実施するのが本来の役割であり、会計監査を受ける財務諸表等の作成までは会社自身での実施が必要になります。
ただ、最終判断をする前の監査法人への事前相談は、積極的に実施した方がいいですし、監査法人側もそれを望んでいます(社内での決定事項をあとからひっくり返すのは監査法人側もやりたくはないのです)。