3-11 販売:売掛金残高確認の実践とポイント
売掛金残高確認の手数料はかかるの?
得意先に対して、直接自社向けの債務の金額を確認する作業を売掛金の残高確認と言います。これは、封書、はがき、FAX等で行なわれ、主に企業間で行われます。
これは不思議に思ったものでしたが、どこの会社でも得意先に回答を求めるという手間をかけるにも関わらず、別に、手数料を請求されるわけでも無く、返答率もほぼ100%でした。
売掛金の残高確認をお願いする会社もどこかの会社に債務の残高確認をお願いされる会社となっており、『お互い様』になるからなんでしょうけど。残高確認をうけたら無料で迅速に回答するというのは日本の商習慣になっているのでしょうね。
売掛金の債権管理については次でもまとめています⇒売掛金の残高確認:債権管理
売掛金残高確認の手順
(残高確認書の発送、回収)
得意先に対して当方が認識している債権金額を伝え、得意先側の認識金額と相違ないか確認します。相違があれば、認識している金額を教えていただけるように依頼します。
伝える方法は、封書、はがき、FAX、メール、いずれの手段でも結構です。
(照合、違算分析)
回答いただき、ズレがある場合には、そのズレの理由が合理的であるか検証します。必要があれば社内の各部署に、それでもわからなければ得意先にも問合せをします。
具体的には、残高確認書差異分析シート(違算表)を作成します。
(会計データ、業務データの修正)
違算の内容をすべて確認したら、必要なら仕訳の修正、販売管理システム情報の修正を行います。
(社内報告)
顛末をまとめ、社内報告を実施します。
売掛金残高確認は年何回やるのか?
売掛金の残高確認は、半年、もしくは1年に一度行われることが多いです(ただし、その実施頻度は、売掛債権の貸し倒れリスクによって会社や事業ごとに異なるべきです)。
売掛金の残高確認は、自社の売掛金の認識と得意先の買掛金の認識をすり合わせる作業になります。すり合わせ時には必ずズレが生じますので、そのズレの分析のために得意先とのやりとりを実施したり、社内調査を実施したりするので、非常に工数がかかります。そのため、年に何回も実施するのは過度の負担となります。
売掛金残高確認の件数は?全件ださないといけないのか?
全件だすものとは決まっていません。
売掛金残高確認を実施する目的や売掛債権の貸し倒れリスクや社内の事務処理の精度等によって発送件数は変えるべきです。
月次で売掛金の入金違算等をモニタリングしてる等の他の内部統制が有効に機能しているなら売掛金残高確認の発送先も減らしても問題ありません。
金額やランダムといった基準を組みわせて発送先を工夫することもできます。
売掛金残高確認はやらないということも選択できます。
※上記は、会計監査、内部統制監査を10年以上実施している公認会計士である私の私見です。
実務では、下記が見られます。
全件発送
1年を通じて複数回で全件発送
一定金額以上+新規取引先
一定金額以上+ランダム+リスクを感じる先
自社実施なし(監査法人は実施している)
何も考えずに、前年踏襲していると、生産性は上がりません。残高確認書の発送も工夫して効率化していきましょう。
売掛金残高確認により発見されること(差異分析)
差異分析の結果、
当方に問題があるものについては、当方で訂正処理を行います。
先方に問題がある場合は、先方に訂正処理を求めます。
さらに、当方に問題がある場合には、訂正処理のみで終わらせず、再発しないよう根本改善を図ることが望まれます。
差異分析にて以下のようなことを明確にします。
1)当社は売上計上しているものの得意先は債務として認識してくれていないもの。
・締日の関係で得意先では、翌月仕入に回されているもの
・先方が仕入処理を忘れていたもの
・製品は納品したものの、得意先の検収があがらないもの
・当方で返品処理ができていない
・納品もしていないのに、営業担当者が得意先担当者との口頭合意で売上を上げているもの
2)当社は売上計上していないものの得意先は債務として認識しているもの
・当方売上処理が漏れている
・当方のみ売上値引き処理が済んでいる
・当方は納品していないが、得意先では仕入処理しまっているもの
残高確認は親子会社間でも実施すべき(監査法人では実施します)
意外に思われるかもしれませんが、
親会社と子会社との間でズレが生じていることがあります。
親子会社間の甘えから、あまりにも長い間そのズレを放置していたため、ズレの内容がわからなくなってしまうこともよくあります。
でも、これがもし、得意先との関係であれば、最終的に損失を被るのは自社と得意先のどちらでしょうね? 力関係からどちらが損失を被るかは予想つきますよね。
だから、売掛金残高確認で判明したズレは、なるべく早期に解決したほうがいい。
売掛金残高確認をきっかけに改善する
さて、異常点が発見されたら、その異常点が再発しないような仕組みを構築する改善活動を合わせて実施されることを薦めています。
営業部門や物流部門、財務部門といった部門横断的な改善活動を実施になることは普通ですし、得意先と協力して改善することもあります。
先ほど、ズレの要因分析を放置しないほうがいいとの例を書きましたが、ある子会社の財務担当者は、一人で親会社にのりこみ、親会社の担当者も巻き込んで、そのズレの要因が即判明するようにデータ処理プロセスを改善されました。それで金一封もらったと聞いています。
ちなみに、私が関与させていただいている会社には、損失を回避する観点から、売掛金残高確認は年に2回ぐらい、売掛金の全件実施し、ズレの分析を完了させ、毎回改善活動もセットで行うことを基本的にお薦めしています。
<追加記載>
・残高確認書差異分析シート(違算表)のサンプル
監査法人の売掛金残高確認
監査法人対応については次に記載しています⇒売掛金の残高確認:債権管理(左記をクリックしてください)
「ちょっと聞いてみたいだけ」も歓迎します。
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※会計や内部統制、内部管理、監査については話せると思います。当方会計監査及び内部統制監査に10年以上携わっている公認会計士です。
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