2-20 ①一対一対応 ②ダブルチェック ③残高管理 の原則
正しい会計記録に基づき安定的な意思決定を行う
『安全経営』とは、正しい会計記録に基づき安定的な意思決定を行う経営。
正しい情報を示す計器に囲まれたコックピットにいる経営者。
そのためには、社長、幹部社員、従業員の経理財務能力UPが必要。
『何事も正しく記録する』という習慣
その前提として、『何事も正しく記録する』という習慣・仕組みが必要です。
この二つがあって初めて、現場の情報が正しく伝わる素地ができ、
適切に変換された会計記録が作られるのです。
だから、
安定的な経営行うためには、『何事も正しく記録する』という習慣・仕組みが社内にあって欲しい。
何事も正しく記録する/三つの原則
とはいえ、『何事も正しく記録する』という習慣・仕組みの導入のためには、どうすればいいか?
下記の『三つの原則』を意識すれば、自ずと組織内に何事も正しく記録するという習慣が身についていきます。
①一対一対応の原則
現物や取引が動くたびに適時に正しく記録を実施するという考え方
②ダブルチェックの原則
一連の取引や現物の動きに関わる処理を、1人の人間で完結するのではなく、
複数の人間でダブルチェックするべきとの考え方
③残高管理の原則
実績高ベースのみならず残高ベースでも管理すべきとの考え方
業務の発生ベースのフローのみならず、残高ベースのストックもいっしょに管理すべきとの考え方
→例えば月末に預金残高は正しいか、在庫残高は正しいか、売掛金の残高は正しいかというように、一定時点での現状を把握しなおし、異常があれば、修正行動をとるということを意味します。
私はこの原則を皆で守ることこそが経営のディフェンス力を支える底力になると考えています。
組織を効率的に業務を遂行させる仕組みとだけとらえるのではなく、自己修復を図りながら、永続する仕組みとしたいのであれば、表面的な仕組みだけではなく根本的な考え方を合せて浸透させることが必要です。
もし、上記の原則を守り、正しく記録が行われている場合、
・業務の現場の業務記録が、現場の状況を正しく映します。
そうすると
・そのような業務記録に基づいて作成される会計情報は、現場を正しく映すことになります。
そのうえで、
・現場を正しく映す会計記録に基づけば、安定した意思決定を行うことができます。
結果、
・それは、安定した経営の仕組みを持つことと同じ意味を持ちます。
私が経営者やCFOに説明するとき、
①一対一対応の原則、②ダブルチェックの原則は理解されやすいです。
これは、日々の業務をミスなく進めるために必要な考え方であり、作業業務に直接的に関係しているからです。
これに対して
③残高管理の原則は、少し理解されにくく、すっかり抜け落ちていることすらあります。
これは、日々の業務はミスしない、ミスがあってもその都度修正しているはずだという考えにもとづいているからです。また、大きな不都合であれば自然と報告されてくるしわかるはずと考えていることにもよります。
ふりかえり、修正、改善といったことが組織的な習慣になっていないことが多いです。
「監査を通じてクライアントに貢献する」
私が監査の仕事をするときに、いつも目的にしていたことです。
監査の完了をゴールにするのではなく、監査を通じて何か良い影響、気づき、モチベーションを提供すると考えていました(高じて、前職を退職してしまいましたが)
そんな考えを持つようになったのは、「稲盛和夫の実学」を読ませていただいた時からでした。
会計ってなんの役に立つのかな?と考えていたときに、この著書に出会いました。
ベンチャー企業の経営者であった著者が経営のために会計に真剣に向き合っている。
また、会計を経営に使えるようにしている。
しかも、具体的かつ、その思想、考え方まで書いてくれている。
とても衝撃的でした。
これ以後、つたないながらも、折に触れて著書を読み返し、実務の軸にしています。
特に、考え方について、
「一対一対応の原則」「ダブルチェックの原則」「残高管理の原則」は、
会計、内部統制を支える根幹原則だと確信しています。
参考:「稲盛和夫の実学 経営と会計」稲盛和夫著